帳簿は7年か10年か。起算日がずれるので、実際はもっと長い

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「領収書って何年とっておけばいいんですか」

聞かれて、7年と答えた。その場では正しいつもりだった。あとで条文を見たら、7年でも10年でも足りない場合があった。

理由は年数ではなく起算日にあった。そして法人税法と会社法で、答えがそもそも違っていた。

この記事は育ちます。公開後も、会話パート・トーク・補足を足していきます。
公開 2026-10-01 / 最終更新 2026-10-01(公開)

水深 — 7年の根拠はどこにあるか

法人税では、帳簿書類の保存期間は原則7年だ。

国税庁のタックスアンサーNo.5930「帳簿書類等の保存期間」に、はっきり書いてある。根拠条文は法人税法126条・150条の2、法人税法施行規則26条の3・54条・59条・66条・67条あたりになる。

対象はこれだけある。

帳簿

  • 総勘定元帳
  • 仕訳帳
  • 現金出納帳
  • 売掛金元帳・買掛金元帳
  • 固定資産台帳
  • 売上帳・仕入帳

書類

  • 棚卸表
  • 貸借対照表・損益計算書
  • 注文書・契約書・領収書

見積書や納品書も、取引に関して作成・受領したものは書類に含まれる。「経理が触った紙はだいたい全部」と思っておけばいい。

起算日が、事業年度末ではない

ここが今回いちばんの発見だった。

7年の起算日は、決算日ではない。

その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間

3月決算の会社で考えてみる。

  • 事業年度末 2026年3月31日
  • 確定申告書の提出期限 2026年5月31日
  • 起算日 2026年6月1日
  • 保存期限 2033年5月31日

事業年度末から数えると、7年2か月ある。

しかも実務では、期限の翌日にシュレッダーにかけるわけにはいかない。決算の月に整理するとなると、次に捨てられるのは2033年6月以降だ。事業年度末から8年近い。

「7年」と覚えていると、2か月ぶん足りない。ここを間違えると、税務調査で「ありません」と言うことになる。

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欠損金が出た年度は10年になる

もうひとつ、年数が伸びる場合がある。

青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた場合、その事業年度の帳簿書類は10年保存になる。青色申告でない年度に災害損失金額が生じた場合も同じだ。

年数は改正で変わっている。

事業年度の開始保存期間
平成30年4月1日前に開始9年
平成30年4月1日以後に開始10年

理由ははっきりしている。欠損金の繰越控除の期間と揃えているからだ。

赤字を翌期以降に繰り越して黒字と相殺できる制度がある。その繰越可能期間が9年から10年に延びたので、証拠書類の保存期間も10年に延びた。

控除を使う側が、その根拠を持っておけ、という建て付けになっている。

起算日はこちらも「提出期限の翌日」だ。3月決算なら、2026年3月期の欠損金なら2036年5月31日まで。事業年度末から数えると10年2か月になる。

会社法は、最初から10年と言っている

ここまで法人税の話をしてきた。ところが、同じ帳簿に別の法律もかかっている。

会社法432条2項。

株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から十年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。

10年だ。しかも起算日が違う。帳簿の閉鎖の時、つまり決算日からになる。

計算書類(貸借対照表・損益計算書など)についても、会社法435条4項が10年と定めている。

まとめるとこうなる。

年数起算日
法人税法(原則)7年確定申告書の提出期限の翌日
法人税法(欠損金あり)10年同上
会社法(会計帳簿)10年帳簿の閉鎖の時

厳しいほうに合わせるしかない。

だから実務の答えは「7年」ではなく「10年」になる。そして起算日の違いを考えると、決算日から10年3か月くらい見ておくのが安全だ。

「7年」と答えてしまった自分の回答は、半分しか合っていなかった。

会社法違反には、過料がある

年数を守らないとどうなるか。

会社法976条は、帳簿や書類の保存義務に違反した場合について100万円以下の過料を定めている。過料は刑罰ではなく行政上の秩序罰だが、科されるのは取締役などの個人だ。

税務側はもっと直接的に効く。帳簿書類が保存されていないと、こうなる。

  • 青色申告の承認が取り消される可能性がある
  • 取り消されると、欠損金の繰越控除が使えなくなる
  • 消費税では、帳簿と請求書等の保存がないと仕入税額控除が否認される

罰金より、この2つのほうが痛い。特に消費税の仕入税額控除は、保存要件そのものが控除の条件になっている。書類がない=控除がない、という直結の構造だ。

7年・10年で終わらないものもある

保存期間は、法人税と会社法だけで決まらない。書類の種類ごとに別の法律が走っている。

  • 給与所得者の扶養控除等申告書などの源泉関係 7年(所得税法)
  • 労働者名簿・賃金台帳・雇入や解雇に関する書類 5年(労働基準法109条。ただし当分の間3年とする経過措置がある)
  • 雇用保険の被保険者関係書類 4年
  • 労災保険に関する書類 3年
  • 健康診断個人票 5年
  • 産業廃棄物管理票(マニフェスト)の写し 5年

そして期限のないものもある。定款、登記関係書類、株主名簿、許認可の書類。これらは会社が続くかぎり持っておく。

一覧にしておくと、書庫の棚を分けるときに効く。年数ごとに箱を分けて、廃棄年を箱に書いておく運用がいちばん楽だと思う。

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電子取引は、紙で保存できなくなった

紙の話をしてきたが、いま実務でいちばん影響が大きいのは電子のほうだ。

電子帳簿保存法。ここは段階を追って変わっている。

宥恕(ゆうじょ)措置:令和4年1月1日〜令和5年12月31日

電子取引のデータを紙に印刷して保存することが、やむを得ない事情があれば認められていた。「まだシステムが間に合わない」でよかった期間だ。

この宥恕措置は令和5年12月31日で終わっている。

猶予措置:令和6年1月1日以降

代わりに入ったのが猶予措置だ。要件は2つで、両方を満たす必要がある。

  • 保存要件に従えない「相当の理由」があると税務署長が認めること
  • 電子データのダウンロードの求めと、出力書面の提示の両方に応じられること

注意したいのは、「猶予」という言葉から受ける印象と中身が違うことだ。紙だけで保存してよい、という制度ではない。 データは残したうえで、検索要件などを満たさなくてよい、という話になっている。

そして「相当の理由」は、システム整備が間に合わないといった事情を想定している。すでにIT環境がある会社が「やりたくない」というのは通らない。

検索要件が外れる基準

電子取引データには、日付・金額・取引先で検索できる状態にしておくという要件がある。ただし例外がある。

  • 基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者
  • または、出力書面(日付・取引先ごとに整理されたもの)の提示に応じられる場合

この5,000万円という線は、令和5年度の改正で1,000万円から引き上げられたものだ。中小の現場はここで救われている。

なお「基準期間」は、原則として2事業年度前を指す。今期の売上ではないので、判定を間違えやすい。

電子と紙が混ざったときが一番こわい

実務でつまずくのはここだと思う。

メールでPDFの請求書を受け取ったら、それは電子取引だ。 印刷して紙で綴じても、元のデータを保存する義務は消えない。

一方、郵送で届いた紙の請求書は、そのまま紙で保存していい。スキャナ保存を使って電子化することもできるが、それは義務ではなく選択だ。

つまり同じ「請求書」でも、届き方によって扱いが分かれる。

  • メール添付のPDF → 電子で保存(紙だけは不可)
  • Web上でダウンロードした請求書 → 電子で保存
  • 郵送された紙 → 紙で保存(電子化は任意)

これが混ざると、どれをどこに置いたか分からなくなる。届き方で置き場所を分けるのが、いちばん単純な整理だと思う。

実務としての結論

年数の表を1枚にしておく。

対象期間いつから
会計帳簿・計算書類(会社法)10年帳簿の閉鎖の時
帳簿書類(法人税・原則)7年確定申告書の提出期限の翌日
同(欠損金が生じた年度)10年同上
源泉徴収関係7年—
労働者名簿・賃金台帳5年(当分の間3年)—
定款・登記・株主名簿期限なし—

運用としては、こうしておくのが無難だと思う。

  • 決算期ごとに一箱にまとめる
  • 箱に「2026年3月期/廃棄可 2037年6月」と書く(会社法10年+余裕)
  • 欠損が出た期は箱に赤いシールを貼る
  • 電子取引データは、決算期ごとのフォルダに届いた形のまま入れる

年数で悩むより、箱に廃棄年を書くほうが早い。

航路 — 年数より、起算日だった

整理する。

  • 法人税の原則は7年。ただし起算日は確定申告書の提出期限の翌日
  • 3月決算なら、事業年度末から数えて7年2か月
  • 欠損金が生じた事業年度は10年(平成30年4月1日以後開始。それ以前は9年)
  • 会社法432条2項は10年。起算日は帳簿の閉鎖の時
  • だから実務の答えは10年。厳しいほうに合わせる
  • 保存がないと、青色申告の取消しと仕入税額控除の否認がある
  • 電子取引の宥恕措置は令和5年12月31日で終了。令和6年1月1日から猶予措置に切り替わった
  • 検索要件が外れるのは基準期間の売上高5,000万円以下など

最初の質問に、いま答え直すとこうなる。

「領収書は7年、と覚えているなら10年に直したほうがいい。そして数え始めるのは決算日ではなく、申告書を出した期限の翌日から」

年数だけ覚えていても足りなかった。どこから数えるかのほうが、実際には事故を起こす。

なぜ7年なのか — 税務署が遡れる期間と揃っている

7年という数字に理由があるのか、気になって調べた。あった。

国税通則法70条が、税務署が更正・決定をできる期間を定めている。

  • 原則 5年
  • 純損失(欠損金)等の金額に係る更正 10年(平成30年4月1日以後開始事業年度。それ以前は9年)
  • 偽りその他不正の行為により免れた場合 7年

並べると、保存期間の表と同じ形になる。

遡れる期間保存期間
通常5年7年
欠損金がある10年10年
不正があった7年7年

保存期間は、税務署が遡って調べられる期間に合わせて設計されている。

原則の更正期限は5年なのに保存が7年なのは、不正があった場合の7年に合わせているからだ。つまり「7年」という数字は、いちばん長く遡られる可能性に備えた年数ということになる。

制度の側から見れば筋が通っている。調べられる期間のあいだは、証拠を持っていてもらわないと調べようがない。

税務調査で実際に出すもの

調査の場で何を見られるか。実際には、まず総勘定元帳から入る。

そこから気になった勘定を追いかけて、元帳 → 仕訳 → 証憑と降りていく。だから元帳と証憑のあいだで、行き来できる状態になっているかが効く。

  • 仕訳に伝票番号が振ってある
  • 証憑に同じ番号が書いてある、または番号順に綴じてある
  • 月別・勘定別のどちらかで、迷わず取り出せる

年数を守っていても、探せなければ「ない」のと同じ扱いになる。保存というのは、置いてあることではなく、出せることだと思う。

調査は通常、直近3期を見ることが多いとされる。ただし問題が見つかれば遡る。だから「3年ぶんだけ手元にあればいい」とはならない。

廃棄するときにやること

期限を過ぎたら捨てられる。ただ、捨て方にも実務がある。

  • 廃棄の記録を残す。何年度のどの箱を、いつ、どう処分したか。1行でいい
  • 溶解処理を使うなら、業者から廃棄証明書をもらう。これも保存しておく
  • 電子データは消し忘れやすい。共有フォルダ、担当者のローカル、バックアップ、クラウド。置き場所を一覧にしておかないと消せない
  • 契約書は期限で切らない。取引が続いているかぎり、基本契約書は生きている。年数で機械的に捨てると、根拠になる契約がなくなる

契約書の扱いは事故が多いところだと思う。保存期間は「7年」でも、その契約が有効なあいだは実務上の必要書類だ。年数の表とは別の軸で管理したほうがいい。

スキャナ保存は、義務ではない

電子帳簿保存法の話でよく混ざるのが、ここだ。

電子帳簿保存法には、大きく3つの区分がある。

区分対象義務か
電子帳簿等保存自分で作った帳簿・書類を電子のまま保存任意
スキャナ保存紙で受け取った書類を画像にして保存任意
電子取引データ保存メールやWebで授受したデータ義務

義務なのは3番目だけだ。

紙で届いた請求書をスキャンして原本を捨てる、というのは選択肢のひとつであって、やらなければいけないことではない。スキャナ保存には解像度やタイムスタンプ、訂正削除の履歴といった要件があるので、体制が整っていないなら紙のまま置いておくほうが安全なこともある。

一方、メールに添付されたPDFは紙に印刷して綴じただけでは足りない。ここだけは逃げ道がない。

「電帳法に対応しなきゃ」と焦るとき、実際に急ぐのは電子取引の1点だけ、と分かっていると落ち着く。

保存期間の起算日、もう一度

最後に、起算日をもう一度整理しておく。ここが今回の主題だった。

対象起算日
法人税の帳簿書類確定申告書の提出期限の翌日
会社法の会計帳簿帳簿の閉鎖の時(=決算日)
源泉徴収関係提出期限の翌日など、書類ごとに規定

法人税のほうは、申告期限の延長を受けていると起算日も動く。3月決算で1か月延長していれば、提出期限は6月30日なので、起算日は7月1日になる。

延長の有無で保存期限が1か月ずれる。細かいが、ぎりぎりで捨てる運用をしていると効いてくる。

だから結局、決算日から11年くらいで箱に廃棄年を書いておくのがいちばん安全だ。会社法の10年に、起算日のずれと余裕を足した数字になる。


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更新ログ

  • 2026-10-01 公開(本文のみ。会話パートはこれから足します)