支払期日を「翌月20日」と決めている。20日が日曜だった。前の金曜に払うのか、翌日の月曜に払うのか。
そして月曜が祝日だった。さらにずれる。
日本の祝日は、月曜に寄せられている。偶然ではなく、法律で動かした結果だ。ハッピーマンデー制度という。
営業日の計算が合わないとき、たいていここが絡んでいる。
この記事は育ちます。公開後も、会話パート・トーク・補足を足していきます。
公開 2026-10-19 / 最終更新 2026-10-19(公開)
水深 — 祝日を月曜に移した法改正
祝日は「国民の祝日に関する法律」(祝日法)で決まっている。日付が条文に書いてある。
その日付を、「◯月の第◯月曜日」に書き換えたのがハッピーマンデー制度だ。2段階で行われた。
第1次(1998年改正、2000年から施行)
- 成人の日 1月15日 → 1月の第2月曜日
- 体育の日 10月10日 → 10月の第2月曜日
第2次(2001年改正、2003年から施行)
- 海の日 7月20日 → 7月の第3月曜日
- 敬老の日 9月15日 → 9月の第3月曜日
目的は、3連休を作って余暇を増やすこと。観光需要の喚起という経済的な狙いもあった。
なお体育の日は、2020年から「スポーツの日」に名称が変わっている。
動かさなかった祝日もある
全部が月曜になったわけではない。動かなかったものがある。
- 元日(1月1日)
- 建国記念の日(2月11日)
- 天皇誕生日(2月23日)
- 昭和の日(4月29日)
- 憲法記念日(5月3日)
- みどりの日(5月4日)
- こどもの日(5月5日)
- 山の日(8月11日)
- 文化の日(11月3日)
- 勤労感謝の日(11月23日)
そして、春分の日と秋分の日は特殊だ。日付が固定されていない。

春分の日と秋分の日は、前年に決まる
これは知っておくと使える。
春分・秋分は、天文学的に計算される。地球の運行で決まるので、年によって日付が変わる。
そして、前年の2月に官報で公示される。国立天文台が「暦象年表」を作り、それに基づいて閣議決定され、公示される。
つまり、2年以上先の春分の日・秋分の日は、公式には確定していない。
カレンダーのソフトやExcelの祝日リストは、計算で先の日付を出していることが多い。計算値と公示値がずれる可能性がゼロではない、ということになる。
実務では気にしなくていいレベルだが、「祝日は全部あらかじめ決まっている」という思い込みは、正確ではなかった。
振替休日と、国民の休日
祝日まわりで、もう2つ仕組みがある。
振替休日
祝日が日曜と重なったとき、その後の最も近い平日が休日になる。
「翌日が休み」と覚えている人が多いが、正確には違う。翌日も祝日なら、その次の平日になる。ゴールデンウィークで起きうる。
国民の休日
祝日と祝日に挟まれた平日が、休日になる。
以前は5月4日がこれだった(憲法記念日と こどもの日に挟まれる)。いまは5月4日がみどりの日になったので、ここでは起きない。
いまも起きるのは、9月だ。敬老の日(第3月曜)と秋分の日のあいだに1日挟まると、そこが休みになる。いわゆるシルバーウィークがこれで生まれる。
第3月曜と秋分の日の関係で決まるので、数年に一度しか起きない。
なぜ営業日計算が難しいのか
ここまでを踏まえると、祝日の計算が面倒な理由が分かる。
- 固定の日付(元日、文化の日など)
- 第◯月曜(成人の日、海の日、敬老の日、スポーツの日)
- 天文計算(春分、秋分)
- 振替休日(日曜と重なったとき)
- 国民の休日(祝日に挟まれたとき)
5種類のルールが混ざっている。 単純な計算式では出せない。
だから、Excelで営業日を計算するときは祝日の一覧表を作ることになる。計算しようとしないほうがいい。
Excelで営業日を数える
実務の方法を書いておく。
① 祝日リストを作る
内閣府が「国民の祝日について」のページで、CSV形式の一覧を公開している。これをダウンロードして、1列に貼る。
この一覧には、振替休日も国民の休日も含まれている。自分で計算しなくていい。
② NETWORKDAYS関数を使う
=NETWORKDAYS(開始日, 終了日, 祝日リスト)
土日と、祝日リストにある日を除いた日数が出る。
③ WORKDAY関数を使う
=WORKDAY(開始日, 日数, 祝日リスト)
「◯営業日後」が出る。支払期日の計算に使う。
④ 土日以外を休みにしたいとき
=NETWORKDAYS.INTL(開始日, 終了日, 週末の指定, 祝日リスト)
土曜だけ休み、日曜だけ休み、といった指定ができる。会社によって休業日が違う場合に使う。

支払日が休日のときの実務
冒頭の疑問に戻る。支払日が休日だったらどうするか。
法律で決まっているわけではない。 契約や社内規程で決める。
一般的な決め方は2つある。
- 前倒し 直前の営業日に払う
- 後ろ倒し 直後の営業日に払う
給与については、前倒しが原則的な考え方になる。労基法の「一定期日払い」があるので、後ろにずらすと支払日が動いてしまう。
買掛金の支払いは、契約による。取引基本契約書に「支払日が金融機関の休業日の場合は、翌営業日とする」などと書かれていることが多い。
書いていない場合が、いちばん揉める。 相手は前倒しだと思い、こちらは後ろ倒しだと思っている。月末が土日の月に、必ず問い合わせが来る。
契約書を作るときに、この1行を入れておくだけで防げる。
金融機関の休業日
もうひとつ、押さえておきたい区別。
祝日と、金融機関の休業日は同じではない。
銀行法施行令で、銀行の休日は次のように定められている。
- 日曜日と土曜日
- 国民の祝日
- 12月31日から1月3日まで
年末年始の12月31日、1月2日、1月3日は祝日ではない。でも銀行は休む。
つまり、祝日リストだけで営業日を計算すると、年末年始がずれる。
祝日リストに、この3日を手で足しておく。これを忘れると、12月と1月の計算が必ず狂う。
そして1月4日が土曜なら、次の営業日は1月6日になる。年始の資金繰りは、ここで詰まりやすい。
海外との取引があるとき
もう一段。相手国の祝日も効いてくる。
- 中国 春節(旧暦なので毎年日付が変わる)、国慶節
- 欧米 クリスマス、イースター(これも毎年変わる)
- イスラム圏 ラマダン明けの祝日(太陰暦)
日本のカレンダーだけ見ていると、「送ったのに返事がない」が起きる。
そして日本のゴールデンウィークとお盆は、海外から見ると理解しにくい休みだ。こちらが休む期間を、先に伝えておくのが実務になる。
年始に「今年の弊社休業日」を送る会社があるのは、これが理由だと思う。
祝日は、増えたり減ったりする
最後に、意外と知られていないこと。
祝日は、法改正で動く。
- 2016年 山の日が新設された
- 2019年 即位礼正殿の儀の日(10月22日)が、その年限りの休日になった
- 2020年・2021年 東京オリンピックに合わせて、祝日が移動した
とくに2020年と2021年は、開催年に限って海の日・スポーツの日・山の日の日付が動いた。カレンダーの印刷が間に合わず、市販のカレンダーと実際の祝日が食い違うという事態が起きた。
システムに祝日を埋め込んでいると、こういうときに対応できない。祝日は、データとして外に持つ。
これは前に書いた元号の話と同じ構図だった。変わるものを、変わらないもののように埋め込まない。

航路 — 5種類のルールが混ざっている
整理する。
- ハッピーマンデー制度は2段階。1998年改正(2000年〜)で成人の日と体育の日、2001年改正(2003年〜)で海の日と敬老の日
- 動いたのは4つだけ。他は日付固定
- 春分の日・秋分の日は天文計算で決まり、前年2月に官報で公示される
- 振替休日は「翌日」ではなく「その後の最も近い平日」
- 国民の休日は、祝日に挟まれた平日。いまは9月に起きうる
- 祝日は5種類のルールの混合。計算せず、内閣府のCSVを使う
- 金融機関の休業日には12月31日〜1月3日が含まれる。祝日リストに足す
- 支払日が休日のときの扱いは、契約に書いておく
3連休を増やすための改正が、営業日計算を複雑にしている。
もともと「1月15日」と書いてあれば、計算はいらなかった。「1月の第2月曜日」になった瞬間に、毎年計算が必要になった。
便利さと単純さは、たいてい逆を向く。ここでも同じだった。
祝日が日曜と重なると、1日減る
意外と語られないが、祝日の総数は毎年同じではない。
祝日が日曜と重なると、振替休日で月曜が休みになる。 だから休みの日数は変わらない——と思いがちだが、そうとも限らない。
土曜と重なった場合は、振替がない。
祝日法には「日曜と重なったとき」の規定しかない。土曜と重なると、その祝日は事実上消える。土日休みの会社にとっては、休みが1日減る。
だから、土曜に祝日がいくつ当たるかで、その年の実質的な休日数が変わる。
年度の営業日数を見積もるとき、ここが効いてくる。「毎年だいたい同じ」で計算すると、数日ずれる年がある。
営業日数の違いが、数字に出る
経理の仕事では、これが月次の数字に現れる。
- 売上が月の営業日数に比例する業種
- 人件費が稼働日数で決まる部門
- 生産量が稼働日で決まる工場
前年同月比を見るとき、営業日数が違うと比較にならない。
3月が21営業日で、前年の3月が22営業日だった。売上が4%減った。これは実質的に横ばいかもしれない。
対策は単純で、1営業日あたりの数字を出す。
=売上 ÷ 営業日数
これを並べると、営業日数の違いを吸収した比較ができる。月次資料に1行足すだけでいい。
そして営業日数は、NETWORKDAYS関数で自動で出せる。毎月手で数えなくていい。
支払サイトの計算
祝日が絡む、いちばん実務的な話。
「月末締め、翌月末払い」「20日締め、翌月10日払い」といった支払条件がある。この期日が休日に当たったときの扱いを、契約に書いておく。
そして、計算をシートにしておく。
- A列 締め日
- B列 支払期日(=EOMONTH(A2,1) など)
- C列 休日調整後(=WORKDAY(B2-1,1,祝日リスト) で翌営業日、=WORKDAY(B2+1,-1,祝日リスト) で前営業日)
WORKDAYを使うと、土日と祝日を自動で避けてくれる。
年末年始は、祝日リストに12月31日〜1月3日を足しておく。本文で書いたとおり。
このシートを作っておくと、年末年始の資金繰り表が一気に楽になる。
年末年始と、ゴールデンウィーク
資金繰りで気をつける時期は、年に2回ある。
年末年始
- 銀行が休むのは12月31日〜1月3日
- 12月30日が最終営業日になることが多い
- 1月4日が土日なら、年始の初日は1月5日や6日になる
12月の支払いが1件でも遅れると、年明けまで動かせない。12月は前倒しで動くのが鉄則になる。
ゴールデンウィーク
- 祝日の並びによって、最大10連休になる年がある
- その間、振込が動かない(モアタイムで着金はするが、記帳や事務は止まる)
- 5月末の支払いに向けた準備が、連休で圧迫される
どちらも、カレンダーが出た時点で、資金繰り表に反映しておく。年初にやってしまえば、1年間困らない。
祝日の名前と、意味
制度の話ばかりしたので、由来のほうも少し。
祝日法には、それぞれの祝日の趣旨が書かれている。読むと面白い。
- 成人の日 おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます
- 海の日 海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う
- 山の日 山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する
- 勤労感謝の日 勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう
山の日の趣旨が、海の日と対になっているのが分かる。2016年に新設されたとき、海の日に合わせて作られた経緯がうかがえる。
そして8月11日という日付には、特に意味がない。お盆に近く、既存の祝日と重ならない日として選ばれたとされる。当初は8月12日が検討されたが、日航機墜落事故の日と重なるため避けられた、という話がある。
日付には理由がなく、月には理由がある。 ハッピーマンデーの4つとは逆の作られ方をしている。
会社の休日を、どう決めるか
最後に、自社の休日の話。
法定休日は、労基法35条で「毎週少なくとも1回」または「4週間を通じ4日以上」と決まっている。
つまり、週休2日は法律の要求ではない。1日でいい。もう1日は会社が決めている休み(法定外休日)になる。
この区別が効くのは、割増賃金のときだ。
- 法定休日に働かせた → 割増率 35%以上
- 法定外休日に働かせた → 時間外労働として 25%以上(週40時間を超えた場合)
だから、どちらが法定休日かを就業規則で特定しておく必要がある。「日曜を法定休日とする」と書いてあるかどうかで、休日出勤の計算が変わる。
そして祝日は、法律上の休日ではない。祝日法は「国民の祝日は休日とする」と定めているが、これは行政機関の休みを定めたもので、民間企業に休みを義務づけるものではない。
祝日に営業している会社が違法でないのは、そのためだ。会社の休日は、就業規則で決まる。
この記事は、まだ書きかけです
この記事は、公開してから足していく形にしています。調べたことを書いた本文がまず先にあって、あとから「聞き手と話し手の会話」「あとで思い出したこと」「読んだ人から教わった補足」が積もっていきます。
だから、同じURLでも半年後には別のものになっているはずです。もし一度読んだことがある記事なら、下の更新ログだけ見てください。増えたところが分かります。
更新ログ
- 2026-10-19 公開(本文のみ。会話パートはこれから足します)

