退職が決まって、引き継ぎに使える時間は約2か月あった。自分の担当業務を手書きでマニュアルにして、それをCopilotに読み込ませて、体裁の整った文書に仕上げた。形としては、完成していた。
でも実際に説明を始めたら、後任はそのマニュアルを開かなかった。僕の話を聞きながら、自分でExcelを立ち上げて、一から作り直し始めた。
この記事は育ちます。公開後も、会話パート・トーク・補足を足していきます。
公開 2026-09-06 / 最終更新 2026-09-24(育つ記事に切り替え)
水深 — 引き継ぎに使えたのは2か月
退職が決まってから、引き継ぎに使えた期間はおよそ2か月。
1か月目は比較的ゆとりがあって、マニュアルを作る時間が取れた。問題は2か月目、つまり退職月に入ってからで、説明することが増えるほど後任の時間が取りづらくなる。こちらの残り時間は減っていくのに、相手の空き時間も同時に減っていく。

暗礁① — AIが整えた文章は、読み手に届かなかった
まず、自分の担当業務を手書きでマニュアルに書き出した。それをスキャンしてCopilotに読み込ませた。
OCRの精度には正直おどろいた。手書きの文字をかなり正確に読み取っていて、ここ数年の進歩を感じた。出てきた文書も、たしかにマニュアルにはなっていた。ただ、頼んでいない説明が足されていたり、AI特有の読みにくさというか、どこか他人事の文章になっているのが気になった。
そして、実際に説明の段になって分かった。後任は、文章では分からないと言った。
結局その人は、僕の説明を聞きながら自分でExcelを開いて、自分の言葉で文章を打ち、そのつどパソコンの画面をスクリーンショットして貼り付ける、という作業を1つずつ始めた。それが、その人にとって分かるマニュアルの形だった。
後任は僕より一回り上の年齢だった。その人が見て、そのとおりに実行できるマニュアルを作らなければいけなかった。AIに整えてもらった時点で、終わりにすべきではなかった。
途中からはこちらもその形式で作るようにしたけれど、最初の1か月ぶんの作り直しは、時間のロスとして大きかった。
暗礁② — 時間を区切らなかった
引き継ぎの時間は、午後の空いたところで1〜2時間ずつ、少しずつ進めればいいと考えていた。
実際にやってみると、そうはならない。マニュアルの内容自体が難しかったり、書き方が読みづらくて説明が長引いたりする。そこに後任あての電話が入る。営業担当が来る。予定していなかったものが、教える時間に割り込んでくる。
結果、1つのテーマで4時間近くかかることになった。当然、残業になる。それが続くと、あとから不満が出るようになった。
引き継ぎは、時間を区切ること。そして、割り込まれても戻ってこられるだけのマニュアルの精度を先に用意しておくこと。この2つだった。

航路 — やっておいてよかったこと
うまくいかなかった話ばかり書いたけれど、これはやっておいてよかった、と思うことがある。手順だけでなく「なぜそうしているか」を渡したことだ。
自分が辞めたあと、その業務は後任が新しく作り替えていくことになる。だから手順を固定して渡しても意味がない。必要なのは、意図と流れが伝わっていること、そして応用してもらえる余地があること。文章を書き続けることが大切なのではなくて、考えることを促す仕組みを残せるかどうかだと思う。
ここは、AIが苦手なところでもある。手順さえ渡せば、AIは体裁の整った文書にしてくれる。でも「なぜこの順番なのか」という意図まで、そこから読み取ってもらうのは難しい。
意図は、その会社の歴史の中にしかない。過去にどんな運用をしていて、どんなエラーが起きたか。「これはこういうことがあったから、こうしてある」と伝えられるかどうか。
それが伝わらないまま手順だけが残ると、いつのまにか「当たり前」になる。当たり前になると、人は考えなくなるし、改善もしなくなる。怖いのは、その当たり前が崩れたときだ。「まさかそれはしないだろう」ということをしないでいた結果、とんでもない事態に発展する。
昔なら、一度失敗を経験してもらうという教え方もあったかもしれない。でも今は、1回のミスのコストが違う。損害の大きさもだけれど、それ以上に人が辞める。事態が収まったとしても、その職場では働き続けられない、一度リセットしないと心が持たない、という話はよく聞く。挽回する機会が用意されているケースは、以前より確実に減っている。
だから、失敗する前に意図を渡しておく。
次に渡すときに足すもの
手順と目的は当然書く。そのうえで、間に挟みたいものがある。「過去にこういうことがあった」「他社ではこういう事故が起きた」という話だ。
それがあると、手順を守る必要が理屈ではなく想像として伝わる。無機質な手順書ではなく、読める文章になる。物語、と言うと言いすぎかもしれないけれど。
結局、受け手がどう受け取るかを見るしかない。AIを使って書けばいいわけでも、目的を端的に書けばいいわけでもなかった。作業をAIにやってもらうにしても、ハンドリングするのは今のところ人間だ。歴史を持って、想像して、応用して仕事をしていく。
そして、受け手には優しくすること。AIにも優しくする必要は、今後もっと出てくると思う。
引き継ぎ資料を「どこまで」書くべきかについてはこちらの記事に書いた。書いてあるのに聞かれ、書いていないと怒られた、という話だ。
AIに文章を整えてもらうことそのものについてはこの記事で別の角度から書いている。
この記事は、まだ書きかけです
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- 2026-09-24 「育つ記事」に切り替え(以後ここに追記していきます)
- 2026-09-06 公開

