取引先との食事。一人あたりいくらまでなら、交際費にならないか。
5,000円と覚えている人が多いと思う。自分もそうだった。
2024年(令和6年)4月1日から、1万円になっている。 倍になった。
社内の精算ルールが5,000円のままなら、使えるはずの枠を自分で捨てていることになる。
この記事は育ちます。公開後も、会話パート・トーク・補足を足していきます。
公開 2026-10-21 / 最終更新 2026-10-21(公開)
水深 — そもそも交際費は、経費で落ちない
前提から整理する。
法人が支出した交際費等は、原則として損金に算入できない。租税特別措置法61条の4が定めている。
会計上は費用でも、税務上は費用として認めない。だから利益に足し戻して、法人税がかかる。
理由は、冗費(無駄遣い)の抑制とされている。接待にお金を使って利益を圧縮することを、税制として認めない、という考え方だ。
ただし、例外がいくつもある。実務はその例外のほうを使っている。
例外① 一人あたり1万円以下の飲食費
いちばん使う例外がこれだ。
社外の人との飲食で、一人あたりの金額が一定額以下なら、交際費等から除かれる。
この金額が、令和6年4月1日以後に支出する飲食費から、5,000円 → 1万円に引き上げられた。
除かれるので、交際費ではなく会議費などとして、全額損金になる。
条件は3つある。
- 社外の人が含まれること(社内だけの飲食は対象外)
- 飲食のための支出であること
- 一人あたりの金額が1万円以下であること
そして、書類の保存が要る。次で書く。

保存すべき書類の中身
金額の要件を満たしても、書類がなければ認められない。必要な記載事項は決まっている。
- 飲食等の年月日
- 参加した得意先等の氏名または名称と、その関係
- 参加者の数
- 金額と、飲食店等の名称・所在地
- その他参考となる事項
領収書だけでは足りない。誰と行ったかが要る。
実務では、領収書の裏か、精算書に書く。
10/20 ◯◯商事 山田部長、鈴木課長/当社2名 計4名 38,000円 一人9,500円
これで足りる。「一人あたりいくらか」を書いておくのがポイントで、判定がその場で終わる。
社内の精算フォーマットに、参加者名と人数の欄を作っておくといい。欄がないと、誰も書かない。
一人あたりの計算
割り方は単純で、支出額 ÷ 参加人数。
- 4人で38,000円 → 9,500円 → 1万円以下なので対象
- 4人で42,000円 → 10,500円 → 超えるので全額が交際費
超えた分だけが交際費になるのではない。 1円でも超えたら、その飲食の全額が交際費になる。
だから、1万円がぎりぎりのときは、人数と金額の記録が効いてくる。
なお、参加人数には自社の社員も含める。社外の人だけで割るのではない。
例外② 中小法人の800万円枠
もうひとつの例外。
期末の資本金が1億円以下の法人は、交際費等のうち年800万円までを損金にできる。
こちらは飲食費に限らない。ゴルフ、贈答、慶弔費(一部)も含めて、交際費全体で800万円まで。
例外③ 接待飲食費の50%
もうひとつ。接待飲食費の50%を損金にできるという規定がある。
中小法人は、②の800万円枠と、③の50%のどちらかを選べる。有利なほうを選ぶ。
- 交際費が年800万円以下 → 800万円枠のほうが有利(全額落ちる)
- 交際費が年1,600万円を超える → 50%のほうが有利になりうる
分岐点は、交際費のうち接待飲食費がどれだけを占めるかにもよる。年間の交際費が800万円を超えそうなら、試算する価値がある。
そして令和6年度改正で、この制度の適用期限が3年延長されている。

整理すると、3段構え
判定の順番はこうなる。
① 一人1万円以下の飲食費か
→ 交際費に該当しない。会議費等として全額損金。
② ①でない交際費のうち、年800万円まで
→ 中小法人なら損金算入可(50%との選択)
③ それを超える部分
→ 損金不算入
①で落とせるものは、①で落とす。①に該当するかどうかの判定が、いちばん金額に効く。
そして①の基準が、5,000円から1万円になった。判定が通る飲食が、一気に増えたということになる。
5,000円のままだと、何が起きるか
社内ルールが古いままだと、こうなる。
- 一人8,000円の会食 → 本当は会議費で全額落ちるのに、交際費で処理している
- 交際費の総額が膨らむ → 800万円枠を早く使い切る
- 枠を超えた分が損金不算入 → 法人税が増える
つまり、知らないだけで税金を多く払っている。
そして、一人8,000円という金額は、都市部の会食では普通に出る。改正の恩恵がいちばん大きいのが、この価格帯だと思う。
社内でやること
改正に合わせて、確認するのはこの5つ。
- 精算規程の金額(5,000円 → 1万円に直っているか)
- 会計ソフトの勘定科目の設定(自動判定の閾値)
- 精算書のフォーマット(参加者名・人数の欄があるか)
- 申請者への周知(現場が5,000円だと思っていると、そもそも申請されない)
- 令和6年4月1日より前の支出は、5,000円基準のまま(さかのぼらない)
最後が見落としやすい。適用は「令和6年4月1日以後に支出する飲食費」なので、それより前の分は旧基準になる。決算をまたぐ会社では、期中で基準が変わる年があった。
交際費と、他の科目との境目
そもそも交際費なのかどうか、迷う支出がある。線を引いておく。
交際費にならないもの
- 専ら従業員の慰安のための運動会、旅行等 → 福利厚生費
- カレンダー、手帳、扇子など、広告宣伝のために配るもの → 広告宣伝費
- 会議に関連して供される茶菓、弁当等 → 会議費
- 新聞、雑誌等の取材に通常要する費用 → 取材費等
交際費になりやすいもの
- 取引先との飲食(1万円超)
- 取引先へのお中元・お歳暮
- ゴルフ、観劇、旅行への招待
- 取引先の慶弔金(社内規程があっても、相手が社外なら交際費)
社内の人だけの飲食は、交際費にも会議費にもならないことが多い。福利厚生費になるか、そうでなければ給与扱いになりうる。
「部署の飲み会を経費で」というのは、ここで引っかかる。全社員を対象とした行事かどうかが分かれ目になる。

消費税の扱いは、別の話
もうひとつ、混ざりやすいところ。
交際費が損金不算入でも、消費税の仕入税額控除は取れる。
法人税と消費税は、別の法律だ。損金にならないから消費税も控除できない、という関係にはない。
ただし、インボイスの要件は満たす必要がある。飲食店からの領収書が適格簡易請求書(登録番号あり)でなければ、控除は取れない。
前に書いたとおり、飲食店は簡易インボイスを出せる業種なので、宛名が「上様」でも構わない。登録番号があるかどうかだけ見る。
そして、税込経理か税抜経理かで、1万円の判定に使う金額が変わる。
- 税抜経理 → 税抜で判定
- 税込経理 → 税込で判定
税込経理の会社は、税抜9,090円の飲食が税込9,999円になり、ぎりぎり収まる。経理方式によって、通る金額が違う。
航路 — 倍になったことを、知らないと損する
整理する。
- 交際費等は、原則として損金不算入(措置法61条の4)
- 一人あたり1万円以下の飲食費は、交際費等から除かれる
- この基準は令和6年4月1日以後の支出から、5,000円 → 1万円に引き上げられた
- 書類の保存が要件。年月日、相手の氏名と関係、人数、金額、店名と所在地
- 1円でも超えたら、その飲食の全額が交際費になる
- 中小法人は、年800万円枠と接待飲食費の50%を選べる
- 適用期限は3年延長された
- 判定に使う金額は、税込経理なら税込、税抜経理なら税抜
この改正は、実務でいちばん効く種類のものだと思う。条文の解釈でも、判例でもない。数字が倍になっただけだ。
だから、知っていれば今日から使える。知らなければ、何も起きない。
社内の規程やシステムに「5,000円」と書かれたまま残っていないか。そこだけ確認すれば済む話が、意外と放置されている。
判定に迷う、具体的な場面
現場で出てくる質問を、いくつか整理しておく。
① 社内の人だけの飲食
1万円基準は「社外の人が含まれる飲食」が前提になる。社内だけの飲み会は対象外。
この場合は、
- 全社員を対象とした行事(忘年会、慰安旅行) → 福利厚生費になりうる
- 一部の人だけ → 交際費または給与扱いになりうる
「部内の打ち上げ」を経費で落とせるかどうかは、ここで決まる。対象が全員に開かれているかが基準になる。
② 手土産、お中元
飲食ではないので、1万円基準の対象外。金額にかかわらず交際費になる。
「一人1万円以下なら何でも大丈夫」ではない。飲食費に限った話だと押さえておく。
③ 打ち合わせのコーヒー、弁当
これは1万円基準を持ち出すまでもなく、会議費になる。
「会議に関連して、通常供与される昼食の程度を超えない飲食物」は、もともと交際費から除かれている。昔から「お茶代・弁当代は会議費」と言われてきたのは、この規定による。
④ 二次会
一次会と二次会を、1つの飲食とみなすか、別々とみなすか。
同じ相手と続けて行った場合は、実態として一体と見られる可能性がある。合算すると1万円を超えることがある。
領収書を分けても、実態で判断される。明らかに続きなら、合算して考えておくほうが安全だと思う。
⑤ 相手が来なかった
予約したが、相手がキャンセルして自社の人間だけになった。この場合は社外の人が参加していないので、1万円基準は使えない。
キャンセル料も、相手のための支出であれば交際費になる。
領収書の但し書きと、参加者
交際費の書類でよく問題になるのが、参加者の記録だ。
税務調査では、ここが見られる。
- 参加者名が書いてある
- 人数が書いてある
- 相手先との関係が分かる
これがないと、「本当に接待だったのか」「私的な飲食ではないか」という話になる。
とくに、代表者や役員の飲食は見られやすい。私的なものが混ざりやすいからだ。
面倒でも、その場でスマホのメモに参加者を書く習慣をつけておく。あとから思い出すのは無理になる。
交際費と、給与の境目
もうひとつ、怖いほうの話。
交際費と認められないと、役員賞与や給与として扱われることがある。
こうなると、
- 法人側 損金不算入(役員賞与は原則損金にならない)
- 個人側 所得税・住民税が課税される
- さらに 源泉徴収漏れを指摘される
二重に効く。 損金にならないだけでなく、個人にも課税される。
だから「交際費で落ちないなら仕方ない」で済む話ではない。交際費として認められるかどうかが、まず大事になる。
参加者の記録は、そのための証拠になる。
資本金1億円という線
中小法人の800万円枠は、期末の資本金が1億円以下の法人が対象になる。
ここで注意が要るのが、大法人の子会社だ。
資本金5億円以上の法人に100%支配されている子会社は、自社の資本金が1億円以下でも、中小法人向けの特例が使えない場合がある。
グループ会社の場合は、親会社の資本金も確認する。自社の数字だけ見て「うちは中小だから」と判断すると外れる。
そして、資本金を1億円以下に減資するという選択をする会社がある。税制上の中小法人になるためだ。近年、大手企業でもこれをやった例が話題になった。
交際費だけでなく、法人税率、欠損金の繰越控除、外形標準課税など、中小法人の扱いは広範囲に効く。1億円という線は、それだけ重い。
経費精算のフォーマット
最後に、実務で使える形を。
精算書に、この欄を作っておく。
| 項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 日付 | 10/20 |
| 店名・所在地 | ◯◯亭(東京都港区…) |
| 参加者(社外) | ◯◯商事 山田部長、鈴木課長 |
| 参加者(社内) | 田中、佐藤 |
| 合計人数 | 4名 |
| 金額 | 38,000円 |
| 一人あたり | 9,500円 |
| 目的 | 新規取引の打ち合わせ |
「一人あたり」の欄があると、判定がその場で終わる。 経理が電卓を叩かなくていい。
そして、この欄があること自体が、申請者への周知になる。「一人あたりで見るんだ」と分かる。
規程を配っても読まれないが、フォーマットは毎回使われる。ルールを伝えたいなら、フォーマットに埋め込むのがいちばん早いと思う。
この記事は、まだ書きかけです
この記事は、公開してから足していく形にしています。調べたことを書いた本文がまず先にあって、あとから「聞き手と話し手の会話」「あとで思い出したこと」「読んだ人から教わった補足」が積もっていきます。
だから、同じURLでも半年後には別のものになっているはずです。もし一度読んだことがある記事なら、下の更新ログだけ見てください。増えたところが分かります。
更新ログ
- 2026-10-21 公開(本文のみ。会話パートはこれから足します)

